45歳からの腐”活動

主にBL本の読書感想を書いています。たまにソロ活も。

翼あるもの 上・下(栗本薫)

こんにちは。八櫻🐰です。今回ご紹介の本は、昭和中頃の話です。

翼あるもの1

翼あるもの (上) (文春文庫 (290‐4))

 

栗本薫先生といえばコレ!という代表作がいくつもあるようですが、私は手に取ったことがなく初めましてです。この本が書かれたのは40年以上前のようですが、その頃にBL要素の入った作品を残されていたことに驚きました。ご本人も前書きあとがきにこのような作品を書く経緯などを書かれていますが、やはり”美少年”はいつの世も憧れであり必要不可欠のようです( ´∀`)

 

今西良(24)…歌手。愛称ジョニー。繊細で美しくセクシー。

森田透(25)…ジョニーのバックバンド、レックスのギタリストでヴォーカル。数年前に脱退。

風間俊介(38)…売れっ子作曲家。ジョニーに好意を寄せる。

巽竜二(33)…俳優。ジョニー主演のドラマで共演。

 

上巻〜生きながらブルースに葬られ〜は、風間視点で描かれる。

良ことジョニーは居るだけで華があり、歌声も抜群。素直で人を疑うことがない、純粋な青年。彼に関わる人々は魅了され、次第に愛情を注ぐようになる。

風間は彼らの大ヒットに欠かせない作曲家で、皆から先生と呼ばれ、良の信頼も厚い。

良を自分のものにするという選択肢はない。それは、彼の危うさや儚さを消してしまう行為で、それが愛情の形であると信じる。

良主演のドラマが決まり、さらに良を世間に晒すことに抵抗を感じる風間だったが、そんなことよりも重大なことが起こってしまう。

共演者の巽が良に好意を抱いている…様子。そして巽も風間と良の関係が何か探りを入れてくる。

 

2人が早朝に対峙するこのシーン、迫るものがありました。お互いに一歩も譲らない。特に巽は自分はこう考えこう行動する、と宣言しそれを行動に移して行きます。

風間は守る愛なので堪えることしかできず、どうしても渡したくないと歯がゆい思いをします。

この先2人の攻防が続きますが、風間の思いを読んでいると辛く、ここまで我慢をするのか?と息切れがします。

…そして衝撃の結末へ。

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翼あるもの (下) (文春文庫 (290‐5))

翼あるもの (下) (文春文庫 (290‐5))

下巻〜殺意〜は、森田視点。時間軸は上巻とほぼ並行している。

透(愛称トミー)は、細身で色白、整った顔。歌もそこそこ歌えるがレックスでは圧倒的存在の良の隣で悩んでいた。脱退後は鳴かず飛ばずで芸能活動から遠ざかっていた。

食いぶちは”体を売ること”。そんな中あるバーで巽と出会う。

透はいつも生気のない態度で巽を困らせていた。透の口からは”ジョニー”という言葉ばかり出てくる。

巽は任侠映画に出るような強面の俳優だが、素はとても紳士的で優しく温かみのある男性。透の言動も徐々に変わりお互い相手を深く想うようになっていく。

ところが良と仕事をするようになった巽の気持ちは変化していく。

 

巽さんという人物がとても魅力的で、登場人物の中で一番好きです。不器用が故に残酷でもありますが、心を偽ることもしないまっすぐさに熱くなりました。

しかし透があまりにもかわいそうで苦しくなります。こういう人間もいるということを教えてくれているのですが、報われないことが多くそれが身から出た錆なのか?と考えるといたたまれなくなりました。

その後透の再起の話が浮上し、やらせ番組に出演するという流れが出てきます。続編と言われる『朝日のあたる家』も気になります。良と透がどのようになっていくのでしょうか。

 

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公衆電話、タバコ、強いお酒…時代ゆえの表現や言い回しもありましたが、なんだかそれが心地いい作品でした。

前書きにも著者が書かれていましたが、上巻は特に読書初心者の私には読みにくかったです^^;

しかし心を揺さぶられるシーンが多々ありました。

栗本先生の他の作品も読んでみたいと思いました。