45歳からの腐”活動

主にBL本の読書感想を書いています。たまにソロ活も。

毒を喰らわば皿まで(十河)

こんにちは。八櫻🐰です。本日はこちら。

毒を喰らわば皿まで (アンダルシュノベルズ)

「1度目の失敗は模索でいい。だが2度目も失敗するならば、それは既に失敗ではなく間違いだ。方法を根本的に誤っている。…3度目も同じ方法で挑むのは、凡策のきわみだ」(アンドリム)

 

一風変わった異世界転生ものです。

乙女ゲーム『竜と生贄の巫女』、現世で攻略本まで購入し隅々まで網羅した”俺”。

第1部の終わり、悪役令嬢の娘ジュリエッタ王太子ウィクルムから、婚約破棄を言い渡される場面でハタと意識を取り戻した俺。なんとジュリエッタの父親、悪名高い宰相アンドリムに転生していた。

 

ここまでの設定でも、なかなか興味深いものがありますよね。

ゲームには詳しくないのですが、近頃は表情や動きが滑らかで個性もあり、攻略対象などで多種のプレイを楽しめるようですね。ふむふむ

ちなみに”毒を食らわば皿まで”とは、「いったん罪を犯した以上、もはや後戻りできないから、ためらうことなく悪に徹せよ」という例えだそうです。

いやはや、これまた勉強になります。

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竜神信仰の国、パルセミス王国。古代竜カリスから恩寵を受け、豊かな国として栄えている。

王は命を落とし、次期王として王太子が控えている。周りには優秀な側近たち。

対して宰相アンドリムは悪事に手を染め私利私欲に走り、悪徳貴族として力を持っていた。

二分された勢力、嫌われ者のアンドリムに味方する者も食えない人物であり、まさに正義と悪というわかりやすい構図。

しかし…前世でゲームの先を知っている俺ことアンドリムは、そうはさせるかと清廉潔白な王太子に一泡吹かせる計画を立てることにする。娘をないがしろにした後悔を必ずさせてやる!

 

アンドリムがまず行ったのは、”悪役をかって出ていた”ということ。私利私欲ではなく、国のために悪役になっていたと豪語するのです。

確かに。。。表があれば裏があるものです。汚いことはやりたくないと望みますが、誰かが尻拭いをしてくれていることもあるのですよね。

それを拒否することの方が私利私欲ではないか、とさえ思えてきます。

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今まで行ってきたことは国のため(実はそうではないことも頭脳明晰なアンドリムは上手に変換してしまう)汚れ役をしていたことや、もう何もいらないと宰相職も譲り綺麗さっぱりしている姿などに触れるうち、王太子側の人間が次々アンドリムに傾倒していく。

ついには恋まで誘導することに。これも全て復讐のため。一つ誤算だったのは体の相性が良すぎたこと笑

 

惹きつける人、とはこういう人なのかな。自分のやるべきことが明白で、迷いがない人。

復讐とは聞こえが悪いけれど、それで惹きつけていく様は読んでいて爽快でした。

していることは決して甘くないので反感を買うすれすれで物事を進めていて、それが魅力的で周りの人がいつのまにか導かれていく、という感じでした。

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後半の山場、王弟殿下が登場。悪行の末、国の片隅に追いやられていたにもかかわらず、王位を継ごうと強引に王都に攻め入ってくる。

王太子がアンドリムの娘ジュリエッタと婚約解消し、平民の娘であるナーシャと婚約した事実。ナーシャの素行が日に日に悪くなり、今や貴族からも反感をかう立場になったことも原因の一つである。

しかし、王弟殿下もかなりのお人柄のようで。。。

 

そこで冒頭のセリフ。アンドリムが王弟殿下を分析した一言です。

これは自らを振り返る言葉になりました。わたしは3度と言わず何度でも間違いを犯している、と愕然としました。3度で気づけばいい方ですね。とほほ

 

異世界ものにはよくあるのですが、ここに自分がいるということは何かしらの使命があるのだ。というセリフです。現実?を受け入れるのに必要な思考なのでしょう。

しかしこれをまさに現実に持ってきたらどうでしょうか??

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今ココにいるわたし。

取るに足らない存在で、一体何のためにいるのか?何も成していない自分。嫉妬や欲にまみれ醜い自分。

それでもココにいて存在している。ココは異世界であり、何かをなすために存在しているのです。

そうか、わたしにも使命があるのか。決して主人公にはなれないほどグータラだけど。

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アンドリムのアスバル家は55歳で死亡する呪いがかけられている。

それを阻止しようと東奔西走し(この辺りのお話は次作なのでしょうか?)、薬を見つけそれをジュリエッタに授ける。

アンドリムは最期を迎え、お話はさらに2,000年後の未来へ〜

 

一冊で完結していることに少々残念な思いでしたが、番外編も数冊あるようでそちらも楽しみにしています。

全体的に話がとても良く出来ていて、細部まで無駄がないという印象です。