こんにちは。八櫻🐰です。本日は、BL小説家の中で一番好きな作家、木原音瀬先生の作品をご紹介します!
ここに来るのが嫌だから捕まらないようにしよう、(刑務所のやり方では)悪いことをして反省する人は少ないのではないだろうか。(堂野)
木原先生の作品は初めまして、です。
こちらの作品は”BL界の芥川賞”と言われているそうです。
読書数の少ない私は、数冊しか芥川賞作品を読んでいないのですが「心の中に何かが残る」のが文学的作品かな、と感じています。(語彙もなく表現も稚拙ですみません汗)
そしてこちらの『箱の中』はズシンと重く心に響く作品でした。
『箱の中』
堂野崇文(30)…強制わいせつ罪(冤罪)で刑務所へ。
喜多川圭(28)…殺人罪。
堂野は「この人痴漢です」と女性に言われ、警察に「やっていない」と訴えても犯人にされた。罪を認めれば数万円の罰金ですぐに釈放されるが、どうしても認めたくなかった。やっていないのだから。結局実刑となり刑務所に入ることになってしまう。
職(市役所勤め)も失い、前科がついても、いわれのない罪でも我慢をして刑務所にいた。
雑居房の中では1人じっと何も話さず、関わらないよう孤独に過ごしていたが、やっと心を許せる友人ができた。彼も冤罪だという。出所したら冤罪で苦しむ人と一緒に団体を立ち上げよう、と話を持ちかけられる。しかし…そんな甘い話ではなかった。
ここまで、刑務所内の規律や違反行為など、知らないことばかりで興味深かったです。熱があっても薬すらもらえない。余計なものを持っていたら懲罰対象。
印象的である堂野の考えが、冒頭の一文です。問題行動を起こせば懲罰として手足を縛られ拘束され、とにかく痛く酷い目に合う。心のケアでは無いのです。
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堂野はある受刑者の言葉でひどく心が乱れ、暴力を振るってしまう。独居房に拘束され酷い扱いを受けた。雑居房へ戻ったのちもずっと泣いて過ごしていた。そんな時、喜多川が優しく頭を撫でてくれた。
言葉の少ない喜多川だったが、堂野の『ありがとう』が聞きたくて何かと世話をやくようになる。温かな堂野の心に触れるうち、喜多川にとって大切な人となっていく。
布団の中では堂野に触れ、キスをし、愛してると囁く。刑務所を出たら一緒に暮らしたい。
喜多川は不幸な生い立ちで、人の優しさに触れたことがない人物。愛情の一途さには可愛さと怖さが見え隠れしています。堂野の喜ぶ顔と声が聞きたいという純粋な心で彼と接しますが、最後には度が過ぎ堂野が出所する時には会えずに別れてしまいます。
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『脆弱な詐欺師』
堂野の出所1年後に喜多川も10年の刑期を終えて出所。執念の堂野探しを始める。
多数の探偵社に探して欲しいと依頼したが、結果は「情報が少なくて探せなかった」と調査が打ち切られる。
調査費用を稼ぐために朝から晩まで体を壊してまで働く喜多川。最後の望みをかけて頼んだ探偵社の大江(48)という男がなんと見つけ出してくれた!!
ここには、喜多川と堂野両方と同じ房にいた芝という男が関わってくるのですが、人の縁、心を砕ける相手がいることや人間性について考えさせられました。
4年間探し続けてやっと情報を得、写真を見て大喜びで飛んで行ったのですが…
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『檻の外』
堂野は出所後結婚し娘が1人、職もあり幸せな生活を送っていた。
ある日娘と公園にいると、聞き覚えのある低音の声が。6年ぶりの再会。
喜多川は嬉しくて嬉しくて堂野の手を握り…あれ?その傍に小さな少女がいる。奥さんも紹介された。堂野から今の生活を聞き、その場を去る。
それから数週間後、喜多川は堂野のそばに引っ越して来る。
戸惑いと恐怖を感じる堂野。自分への思いに応えられないけれど大切な友達。寂しい喜多川に温かい気持ちを伝えようと、自分の家族と食事を共にする機会を持つことに。
最初は不器用な喜多川でしたが、食事の回を重ねるごとに家庭の温かさに触れ、大きい体躯で絵の上手な喜多川に懐く娘を可愛く思い始めます。
その後なんとも痛々しい事件が起こり、その原因を知った堂野は大きく揺れます。自分のことを一生懸命に思ってくれる喜多川のこと、そんな彼を少しでも疑った自分。それでも心を寄せてくれる一途な気持ち。
もう迷いはありませんでした。そして喜多川の夢は叶ったのです。
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さらに「雨の日」「なつやすみ」など短編集があるそうですが、今現在手に入れるのは困難なようです涙 2人のその後、いつか読めるといいなぁ。